この記事でわかること

  • Cortexとは何か、内部開発者ポータル(IDP)の役割
  • サービスカタログ・スコアカード・インシデント管理の機能
  • 料金プランと導入条件
  • セットアップ手順とGitHub/PagerDuty連携
  • Backstage・Port・OpsLevelとの比較
  • 導入に適した組織の条件

30秒で結論

Cortexは内部開発者ポータル(IDP)を提供するSaaSで、マイクロサービスの所有者・依存関係・品質スコアを一元管理できます。料金はStarterプランが無料(25サービスまで)、Teamプランが1サービスあたり月額$4〜。SpotifyのBackstage(OSS)と比べて、セットアップが圧倒的に簡単で、非エンジニアでも管理画面から操作可能なのが強みです。マイクロサービスが50以上ある組織で特に効果を発揮します。

Cortexの概要

Cortexとは

Cortexは2020年に設立されたサンフランシスコのスタートアップが提供する内部開発者ポータル(Internal Developer Portal, IDP)です。シリーズBで$35Mを調達しており、DoorDash、TripAdvisor、Grammarly等の企業が導入しています。

内部開発者ポータルとは

マイクロサービスアーキテクチャを採用する企業では、サービス数が100を超えると「誰がどのサービスを所有しているか」「このサービスのAPIドキュメントはどこか」「デプロイ頻度やSLOはどうか」といった情報が散逸します。

内部開発者ポータルは、これらの情報を1箇所に集約し、開発チームの生産性を向上させるツールです。

主な機能

  1. サービスカタログ — 全サービスの一覧・オーナー・依存関係・ドキュメントを集約
  2. スコアカード — サービスの品質をスコア化(テストカバレッジ、デプロイ頻度、SLO準拠率等)
  3. インシデント管理連携 — PagerDuty・OpsGenie連携でオンコール情報を表示
  4. カスタムルール — 「本番サービスにはREADMEが必須」などのルールを定義し、準拠度を可視化
  5. API統合 — GitHub、GitLab、Datadog、AWS、GCP等から自動でデータ取得

Cortexの機能

料金プラン(2026年4月時点)

プラン 月額料金 サービス上限 主な機能
Starter 無料 25サービス カタログ、基本スコアカード
Team $4/サービス/月 無制限 カスタムスコアカード、インテグレーション
Enterprise 要問い合わせ 無制限 SSO、監査ログ、SLA保証

コスト計算例

サービス数 Starter Team Enterprise
25 無料 $100/月 要問い合わせ
100 対象外 $400/月 要問い合わせ
500 対象外 $2,000/月 要問い合わせ

Backstage(OSS)との比較

SpotifyがOSSとして公開したBackstageは無料ですが、セットアップと運用に相当なエンジニアリング工数が必要です。

Cortex Backstage
料金 $4/サービス/月〜 無料(OSS)
セットアップ時間 1-2日 2-4週間
運用コスト ゼロ(SaaS) 専任エンジニア1-2名
プラグイン開発 不要(GUI設定) TypeScript開発が必要
カスタマイズ性
日本語対応

50サービス以下・エンジニア20名以下 → Cortex(セットアップの早さ優先) 100サービス以上・プラットフォームチームあり → Backstage(カスタマイズ性優先)

セットアップ手順

1. アカウント作成

cortex.io でアカウントを作成。Starterプランなら即時利用可能。

2. GitHub連携

Settings → Integrations → GitHub → Install GitHub App

Cortex GitHub Appをインストールすると、リポジトリ情報が自動で取り込まれます。

3. サービス定義ファイルの追加

各リポジトリのルートに cortex.yaml を配置します。

# cortex.yaml
openapi: 3.0.1
info:
  title: User Service
  description: ユーザー管理サービス
  x-cortex-tag: user-service
  x-cortex-type: service
  x-cortex-owners:
    - type: group
      name: backend-team
  x-cortex-git:
    github:
      repository: myorg/user-service
  x-cortex-custom:
    language: TypeScript
    framework: NestJS
    tier: critical

4. スコアカードの設定

GUI上でスコアカードを作成します。

例:Production Readiness スコアカード
- [ ] READMEが存在する(+10点)
- [ ] テストカバレッジ80%以上(+20点)
- [ ] デプロイパイプラインが設定済み(+15点)
- [ ] オーナーが設定されている(+10点)
- [ ] アラートルールが設定済み(+15点)
- [ ] APIドキュメントが公開済み(+10点)
- [ ] 依存関係が最新(+20点)

スコアカードの設定

活用パターン

パターン1:サービスオーナーシップの明確化

「このサービスの担当者は誰?」がSlackで毎日飛び交うチームに。Cortexに全サービスのオーナーを登録しておけば、検索一発で担当チーム・オンコール担当者がわかります。

パターン2:品質の底上げ

スコアカードで「本番リリース前に満たすべき基準」を定義し、スコアが低いサービスを可視化。チーム間の健全な競争が生まれ、全体の品質が底上げされます。

パターン3:オンボーディング高速化

新メンバーが「このサービスは何をしていて、誰が担当で、APIはどこにあるか」をCortexだけで把握可能。ドキュメントが散在している問題を根本解決します。

活用パターン

IDP 4社比較

特徴 Cortex Backstage Port OpsLevel
提供形態 SaaS OSS SaaS SaaS
無料プラン 25サービスまで 完全無料 15サービスまで なし
有料プラン $4/サービス/月 無料(運用コスト) 要問い合わせ 要問い合わせ
セットアップ 1-2日 2-4週間 1-2日 3-5日
スコアカード プラグインで可
ワークフロー自動化
日本語対応
コミュニティ

IDP比較

よくある質問(FAQ)

Q. Cortexはコードを書かずに使えますか?

基本機能はGUI操作のみで利用可能です。サービスカタログの閲覧、スコアカードの確認、検索はすべてブラウザ上で完結します。ただし、cortex.yaml の設定ファイルをリポジトリに追加する作業はエンジニアが行う必要があります。

Q. マイクロサービスでなくても使えますか?

はい、モノリスアーキテクチャでも利用可能です。リポジトリ単位・チーム単位でサービスを定義できるため、「バックエンド」「フロントエンド」「インフラ」のような粒度でも管理できます。ただし、マイクロサービスが50以上ある組織で最も効果を発揮します。

Q. セキュリティは大丈夫ですか?

SOC 2 Type II認証を取得しています。データの暗号化(転送中・保存時)、SSO、監査ログ、IP制限などのセキュリティ機能が揃っています。Enterprise プランではカスタムデータ保持ポリシーも設定可能です。

Q. Datadog・PagerDutyとの連携はどう動きますか?

Datadogからはサービスのメトリクス(レイテンシ、エラー率、スループット)を自動取得し、スコアカードの評価に使えます。PagerDutyからはオンコールスケジュール・インシデント情報を取得し、各サービスの「現在の担当者」をリアルタイム表示します。

Q. 導入に反対する人がいる場合はどう説得しますか?

最も効果的なのは「インシデント発生時に担当者を見つけるまでの時間」を計測して見せることです。多くの組織では、担当者特定に平均15-30分かかっています。Cortex導入後はこれが数秒になります。この時間短縮×インシデント件数で年間コストを算出すると、ROIが明確になります。

Q. Backstageから移行できますか?

Backstageの catalog-info.yaml の構造は cortex.yaml と類似しているため、変換は比較的容易です。Cortex公式にもBackstageからの移行ガイドが用意されています。