介護向けAIツールおすすめ7選 — 記録とシフトの残業を減らす選び方 (2026年版)

介護向けAIツールおすすめ7選 — 記録とシフトの残業を減らす選び方 (2026年版)

この記事のポイント

  • 介護のAI導入で最初に効くのは「ケース記録の音声入力」。手書き転記が消えるだけで残業が目に見えて減ります
  • ツールは7カテゴリに分けて考える。全部入りの1本より、記録・計画書・シフトを別々に選ぶほうが現実的
  • 利用者の名前や病名は「要配慮個人情報」。無料の汎用AIにそのまま打ち込むのは、正直やめたほうがいいです
  • クラウド型の介護ソフトは月5,000〜30,000円が相場。デジタル化・AI導入補助金でクラウド利用料の一部が戻る枠もあります
  • 迷ったら、まず記録の音声入力から。ケアプランの下書きは「叩き台まで」と割り切ると失敗しません

夜勤明けの詰所で、日中に走り書きしたメモをパソコンに打ち直している。ヘルパーが訪問先から戻ってきて、また同じ内容を別の様式に書き写している。20時を回っても記録が終わらない。

こういう景色がある事業所なら、AIで最初に手をつけるべき場所ははっきりしています。ケース記録の音声入力です。

ケアプランの自動作成でも、AIによるシフト最適化でもありません。記録の「書き写し」をゼロにする。ここだけで、スタッフ1人あたり1日20〜30分の手戻りが消えることがあります。派手さはないですが、地味に効きます。

この記事では、介護現場で使えるAIを7つのカテゴリに整理して、どれから入るべきかを順番に決めていきます。


介護のAIツールとは、そもそも何を指すのか

介護向けAIツールおすすめ7選 — 記録とシフトの残業を減らす選び方 (2026年版) 図2

介護のAIツールとは、記録・書類作成・シフト調整といった「利用者と向き合っていない時間」を短くするソフトのことです。見守りセンサーのような機器ではなく、事務作業側を指すのが本記事の範囲。

ここが最初のつまずきポイントです。「介護AI」で検索すると、転倒検知センサーとケース記録ソフトと汎用のチャットAIが同じ土俵で並びます。中身はまったく別物。

整理するとこうなります。

区分何をするか現場での効き方
事務系AI(本記事の範囲)記録・計画書・シフト・問い合わせ対応残業時間が直接減る
見守り・センサー系転倒検知、離床検知、睡眠計測夜勤の巡回負担が減る
ロボット・介助機器移乗支援、入浴支援腰痛リスクが減る

つまり、「AIで介護を楽にしたい」と言うとき、まず事務系から入るのが投資対効果としては素直です。センサーは機器代が跳ねますが、事務系は月数千円から試せます。

そして事務系の中にも、性格の違う道具が混ざっています。


7つのカテゴリで考えると、選択肢が一気に絞れる

介護向けAIツールおすすめ7選 — 記録とシフトの残業を減らす選び方 (2026年版) 図3

介護向けAIは「記録」「計画書」「シフト」「請求チェック」「問い合わせ」「研修」「情報整理」の7カテゴリに分かれます。全部を1本でまかなうツールは、2026年7月時点では現実的に存在しません。

なぜ分けるのか。理由は単純で、それぞれ求められる精度がまったく違うからです。

記録の音声入力は「多少の言い間違いは後で直せばいい」。でもケアプランは、サービス担当者会議に出す以上、内容の責任が事業所にあります。同じ精度基準で選ぶと、必ずどちらかが破綻する。

7カテゴリを一覧にします。

#カテゴリ主な用途導入の優先度
1記録の音声入力ケース記録、申し送り★★★ 最優先
2計画書の下書きケアプラン、個別支援計画のたたき台★★☆
3シフト作成支援常勤・非常勤の組み合わせ★★☆
4請求・加算チェック算定漏れ、様式の抜け★★★
5問い合わせ対応家族からの電話、見学予約★☆☆
6研修・教育新人向けQ&A、手順の確認★☆☆
7情報整理通知文・運営規程の読み解き★★☆

つまり、★★★の「記録」と「請求チェック」から入れば、投資が回収しやすい。ここを外して問い合わせボットから始めると、体感が薄くて社内で立ち消えになります。

では、それぞれ何を使うのか。


おすすめ7選 — カテゴリごとに1つずつ決める

介護向けAIツールおすすめ7選 — 記録とシフトの残業を減らす選び方 (2026年版) 図4

以下は、各カテゴリで最初に検討する価値があるものを1つずつ挙げたものです。「これを買え」ではなく「この型のものを探せ」と読んでください。

#カテゴリ候補月額の目安ひとこと
1記録の音声入力介護記録ソフトの音声入力機能5,000〜30,000円汎用の文字起こしより様式連携が効く
2計画書の下書きChatGPT / Claude無料〜3,000円前後あくまで叩き台。そのまま出さない
3シフト作成支援シフト特化のクラウドサービス要見積が多いAI最適化はまだ発展途上
4請求・加算チェック介護ソフトの標準機能記録ソフトに同梱単体で買うものではない
5問い合わせ対応汎用チャットAI +自社FAQ無料〜電話は結局人が出る
6研修・教育NotebookLM無料枠あり手順書を読ませて質問できる
7情報整理Gemini / Felo無料〜通知文の要点抽出に強い

つまり、7つのうち実際に「新しくお金を払う」のは1〜3のあたり。残りは既存ソフトの機能か、無料枠で足ります。ここを勘違いして7本契約すると、月の固定費が跳ねるだけで終わります。

一つずつ、選ぶ理由を掘ります。


なぜ記録の音声入力が最優先なのか?

介護向けAIツールおすすめ7選 — 記録とシフトの残業を減らす選び方 (2026年版) 図5

記録の音声入力が最優先である理由は、削減できる時間が「毎日・全スタッフ・確実に」発生するからです。他のカテゴリは月1回や年数回の作業で、効果が薄まります。

計算してみます。スタッフ20人の事業所で、1人あたり1日20分の記録転記があるとします。20人 × 20分 = 400分。1日あたり6時間半以上が、書き写しに溶けている。

この数字が刺さるかどうかが、導入判断の分かれ目です。

音声入力を選ぶときの見どころは3つ。

  • 様式に直接入るか — 文字起こしだけして、結局コピペするなら意味が薄い
  • 専門語彙を覚えるか — 「褥瘡」「移乗」「ADL」を毎回誤変換するようでは使えない
  • オフラインの端末で動くか — 訪問先で電波が弱い場面は普通にあります

3つ目、意外と見落とされます。訪問系なら特に、電波が入らない集合住宅の中で入力できるかどうかは死活問題。

汎用の文字起こしアプリと介護ソフトの音声入力機能、どちらを選ぶか迷ったら後者です。理由は様式連携。前者は「録音してテキストにする」で止まりますが、後者は「その場でケース記録の該当欄に入る」ところまで持っていきます。ここが決定的な差。

書き写しが消えたら、次に重い書類はケアプランです。


ケアプランをAIに書かせていいのか?

ケアプランの下書きにAIを使うのは問題ありません。ただし、そのままサービス担当者会議に出すのは無理があります。AIは利用者の生活歴も家族関係も知らないからです。

ここは正直に書きます。「AIがケアプランを自動作成」という売り文句を見かけますが、2026年7月時点の実力は「たたき台の生成」まで。

何ができて、何ができないか。

できることできないこと
アセスメント内容から課題の候補を並べる家族の意向を汲んだ優先順位づけ
過去の記録から状態変化を要約する担当ケアマネの臨床判断の代替
文章表現を整える、誤字を消す加算要件との整合性の最終確認
目標文の言い回しを複数案出す利用者本人の「本当はこうしたい」の把握

つまり、AIは「白紙から書き始める苦痛」を消してくれる道具。判断そのものは渡せません。ここを取り違えると、実地指導で痛い目を見ます。

使い方のコツを1つ。AIへの指示文(AIに何をしてほしいか伝える文章のこと)に、利用者の氏名や病名を入れない。「80代女性、要介護2、独居、右膝の痛みで屋内移動に不安あり」のように匿名化した状態で書かせて、固有名詞は自分で埋める。これだけで個人情報のリスクがぐっと下がります。

この「匿名化して投げる」という考え方は、他のカテゴリでも共通です。


利用者の情報をAIに入れていいのか? — 個人情報の線引き

介護の利用者情報は個人情報保護法上の「要配慮個人情報」にあたります。病歴・障害の内容が含まれるためで、通常の氏名や住所より扱いが厳しい。無料の汎用AIに素で打ち込むのは避けるべきです。

線引きを表にします。

入力してよいか内容の例理由
○ 問題なし「デイサービスの送迎表の作り方」個人が特定されない一般論
○ 問題なし「80代女性、要介護2、独居」匿名化されており特定不能
△ 契約次第記録本文(氏名を伏せたもの)事業所の利用規程による
× 避ける「山田○○様、認知症、糖尿病」要配慮個人情報そのもの

つまり、判断基準は「その文章だけ見て利用者を特定できるか」。特定できるならクラウドに投げない。シンプルな基準ですが、現場では守られていないことがあります。

対策は3段構えで考えます。

  • 匿名化してから投げる — いちばん安上がりで確実
  • 法人向けプランを契約する — 入力内容を学習に使わない設定があるか確認
  • 介護ソフト内蔵のAIを使う — 個人情報の取り扱いが契約に含まれている

3つ目がいちばん安全ですが、そのぶん月額が乗ります。予算と相談。

なお、これは介護に限った話ではありません。社内の機密データをAIに扱わせる考え方は業種を問わず共通で、内部監査の現場でも同じ議論が起きています。組織としてのAI利用ルールの作り方は内部監査AIツールの記事が参考になります。チェック体制の考え方が、介護の実地指導対策とよく似ています。

情報の扱いが決まったら、次はお金の話。


料金はいくらかかる? — 相場と補助金

クラウド型の介護ソフトは月額おおよそ5,000〜30,000円が目安です。事業規模・機能・オプションで変動します。汎用のチャットAIは無料〜月3,000円前後で、桁が1つ違います。

介護のコミミの料金比較では、初期費用が無料のものから要見積のものまで幅があり、無料お試し期間を2カ月設けているサービスも見られます。

構成別のざっくり試算です。スタッフ20人、利用者60人の事業所を想定します。

構成月額の目安向いている事業所
汎用AIのみ(下書き・情報整理)0〜3,000円まず試したい。記録は既存ソフト
介護ソフト(音声入力込み)5,000〜30,000円記録の残業を本気で潰したい
介護ソフト+汎用AI法人プラン10,000〜40,000円個人情報を扱う前提で運用したい

つまり、いきなり上の段から入る必要はない。汎用AIの無料枠で「AIに書かせるとはどういうことか」を1カ月体感してから、記録ソフトに進むのが安全です。

そして、ここで効いてくるのが補助金。

デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)は、中小企業の生産性向上を目的として、AIを含むソフトウェアの導入経費の一部を支援する制度です。介護事業所も対象になりえます。通常枠では初年度と2年度目のクラウド利用料の1/2が補助される枠があるとされており、月額の負担が重くて導入を諦めていた事業所には効きます。

ここまでの整理: 記録の音声入力から入る → 個人情報は匿名化して投げる → 汎用AIは無料枠、記録ソフトは月5,000〜30,000円 → 補助金でクラウド利用料が軽くなる可能性がある。この4つが決まれば、あとはツール選定の細部です。

補助金は年度ごとに要件が変わります。申請前に必ず最新の公募要領を確認してください。


介護ソフトはどれを選べばいい? — シェアと選定軸

介護ソフト市場は上位数社に集中しています。2ndLaboの2026年のシェア調査では、ワイズマンが61,200件で19.15%、カイポケが60,800件で19.02%と、上位2社で4割近くを占める構図です。

シェアが高いソフトを選ぶ理由は、実は機能ではありません。報酬改定への追随速度です。介護報酬は定期的に改定され、様式も加算要件も変わります。導入社数が多いソフトほど、改定対応の開発リソースが確保されている。

選定軸を4つに絞ります。

  • LIFE連携があるか — 科学的介護情報システムへの提出が自動化できるか
  • ケアプランデータ連携システムに対応しているか — 居宅と施設の様式受け渡し
  • モバイル入力ができるか — タブレット・スマホからリアルタイムで書けるか
  • 加算要件の自動チェックがあるか — 算定漏れは直接の売上損失

ITreviewの製品紹介では、タブレットやスマートフォンからリアルタイムで記録入力ができるモバイル対応、個別支援計画やアセスメント機能、加算要件の自動チェック、LIFE連携などが実装済みの製品が挙げられています。つまり、この4軸はもはや「あれば嬉しい」ではなく「無いと困る」の水準に来ています。

規模別の目安を表にします。

事業所規模重視すべき軸注意点
利用者20〜40人月額の安さ、操作の簡単さ多機能すぎると使いこなせない
利用者40〜80人モバイル入力、加算チェックここから記録の量が効いてくる
利用者80〜100人LIFE連携、データ分析監査対応の工数が跳ねる規模

つまり、規模が小さいうちは「シンプルで安い」が正解。80人を超えたあたりから、連携機能の有無が効いてきます。

ソフトを決めたら、次は現場に根付かせる話。


導入して現場が使ってくれない理由は何か?

介護のAI導入が失敗する最大の理由は、機能不足ではありません。「今までのやり方のほうが早い」とスタッフが感じてしまうことです。ここを設計しないと、どんなに高機能でも使われません。

実際に起きるパターンを並べます。

  • 二重入力になる — 紙にも書いてタブレットにも入れる。これでは仕事が増えただけ
  • 入力項目が多すぎる — 全部埋めろと言われて、結局後回しになる
  • 誰も教えられない — 導入担当が1人だけで、その人が休むと止まる
  • 端末が足りない — 5人でタブレット1台を回すと、待ち時間で結局手書きに戻る

つまり、ツールの問題ではなく運用設計の問題。特に「二重入力」は最悪です。紙を廃止する決断とセットでないと、AI導入は必ず形骸化します。

対策はこう組みます。

失敗パターン打ち手
二重入力導入日から紙の様式を回収する。並行運用期間を作らない
項目が多い最初は必須項目だけ。3カ月後に増やす
教えられる人が1人各シフトに1人ずつ「詳しい人」を作る
端末不足個人スマホ利用の可否を先に決める

つまり、導入の成否は初月の設計で8割決まります。ここに時間を使ってください。

現場が動き出したら、次は「AIの答えをどこまで信じるか」。


AIの答えは信じていいのか? — 嘘への向き合い方

生成AIは、事実でないことをもっともらしく書くことがあります。「AIがそれっぽい嘘をつくこと」と呼ばれる現象で、介護保険法の解釈や加算要件のような、条文が絡む質問では特に危険です。

具体例で説明します。「◯◯加算の算定要件を教えて」とチャットAIに聞くと、それらしい答えが返ってきます。数字も条文番号も入っている。でもその内容が最新の改定を反映しているとは限りません。

危険度を分けます。

用途危険度理由
文章の言い回しを整える事実を作らない作業
記録の要約低〜中元の記録が手元にあるので検証できる
一般的な業務の相談常識の範囲で判断できる
加算要件・法令解釈古い情報でも自信満々に答える
実地指導の対応方法自治体ごとの運用差を反映しない

つまり、条文と数字が絡む質問は原則としてAIに聞かない。厚生労働省の通知や自治体の集団指導資料を直接見る。これが安全です。

どうしても通知文を読み解きたいなら、AIに文書そのものを読ませる方法があります。手元のPDFを取り込ませて「この資料の中から答えて」と指示すれば、AIが記憶から作文するリスクが減る。NotebookLMがこのタイプの代表格です。運営規程や手順書を読ませておけば、新人からの「これどうするんでしたっけ」に答える土台になります。

情報収集の精度をもう一段上げたいなら、Feloの使い方をまとめた記事が参考になります。検索と要約を組み合わせる道具の使い分けが分かると、通知文の読み解きが速くなります。

嘘への警戒ができたら、シフトの話へ。


シフト調整はAIで解決するのか?

シフト調整のAI最適化は、2026年7月時点では期待しすぎないほうがいいカテゴリです。理由は、介護のシフトが数理最適化で解ける問題ではないから。

「Aさんは夜勤明けの翌日は入れない」「BさんとCさんは組ませないほうがいい」「Dさんは子どもの迎えがあるので17時上がり」。この手の制約は、条文にもマニュアルにも書いていません。管理者の頭の中にあります。

AIができるのは、そこまで。

  • 法定の勤務間インターバルを満たしているかのチェック
  • 常勤換算の計算
  • 希望休の集計と衝突の洗い出し
  • 前月のシフトをベースにした自動生成の下書き

つまり「計算と検算」は任せられるが、「誰と誰を組ませるか」は人の判断が残ります。ここを自動化できると期待して高い製品を入れると、正直イマイチな結果になりがちです。

現実的な落としどころはこうです。

工程担当
希望休の収集ツール(フォーム化するだけで劇的に楽になる)
素案の作成ツール(前月コピー+希望反映)
人の組み合わせ調整人(ここは譲れない)
法定要件のチェックツール(人がやると必ず見落とす)

つまり、シフトは「AIで作る」のではなく「AIで検算する」。この期待値で入れば、ちゃんと役に立ちます。

ここまでで7カテゴリのうち主要なものを見てきました。残りを軽く。


問い合わせ・研修・情報整理はどこまで使えるか

問い合わせ対応と研修は、優先度としては低めです。理由は、介護の問い合わせは電話が中心で、結局人が出るから。チャットボットを置いても入電は減りません。

ただし、使いどころはあります。

問い合わせ対応 — ボットで受けるのではなく、返答の下書きを作る用途。家族からの相談メールに対して、丁寧な文面の骨格をAIに出させて、担当者が中身を埋める。文面を1から考える時間が消えます。

研修 — 手順書や運営規程を読ませて、新人が自分で質問できる環境を作る。「移乗介助の手順を教えて」に対して、自社の手順書に基づいて答えさせる。一般論ではなく自社ルールを返させるのがポイントです。

情報整理 — 厚労省の通知文、自治体の集団指導資料、報酬改定の解説PDF。この手の長い文書を要約させる。ただし、要約は必ず原文と突き合わせる。前のセクションで書いたとおり、条文の話でAIを信じるのは危険です。

3つとも、既存の無料枠で試せます。新規契約の必要はありません。

社内で「AIって何ができるの」という空気を作る意味では、この3つから触ってもらうのは悪くない入り口。研修資料に図解が欲しくなったら、AIイラストツールの比較記事が使えます。手順書の挿絵を外注せずに作れるようになると、更新のハードルが下がります。

さらに踏み込んで画像を自前で作りたいなら、ComfyUIとStable Diffusionの比較も参考になりますが、介護の事務作業としてはオーバースペック気味。まずは既製ツールで十分です。

では、結局どれから始めるのか。


どの順番で導入すればいい? — 3カ月のロードマップ

導入の順番は「無料で慣れる → 記録を潰す → 周辺を足す」の3段階です。いきなり全部入れると、現場が混乱して全部止まります。

時期やること費用
1カ月目汎用AIの無料枠で、管理者だけが触る。文書の下書きに使う0円
2カ月目介護ソフトの音声入力を1ユニット・1事業所で試す。紙は回収5,000〜30,000円
3カ月目全ユニットに展開。加算チェックとLIFE連携を設定同上

つまり、2カ月目が山場。ここで紙を回収できるかどうかが、その後の全部を決めます。並行運用は絶対にしない。

補助金を使う場合は、この前に申請のスケジュールが入ります。年度の公募時期を確認してから逆算してください。導入してから「補助金の対象外でした」となるのがいちばん痛い。

そして、3カ月目以降。データが溜まってきたら、記録の傾向分析に手を出す価値が出てきます。ただしここは応用編。まずは3カ月、記録の残業を潰しきることに集中してください。


AI PICKS編集部の判定

介護向けAIの本命は、記録の音声入力の一択です。 ここに全振りしていい。

理由は削減時間の確実性。スタッフ20人 × 1日20分の転記が消えれば、月あたり100時間以上が浮く計算になります。ケアプランの自動生成やシフトのAI最適化は、聞こえはいいですが効果が読めません。判断を伴う仕事は、結局人が引き取ることになるからです。

一方で、汎用のチャットAIを介護に使う話は、正直まだ過大評価されています。加算要件を聞けば古い情報を自信満々に返してくるし、利用者情報を入れれば要配慮個人情報の管理が破綻する。使うなら「匿名化した状態で、文章の下書きだけ」。この線を引けない事業所は、手を出さないほうが安全です。

料金面では、クラウド型の介護ソフトの月5,000〜30,000円という相場は、削減できる残業代を考えれば破格の部類。しかも補助金でクラウド利用料の一部が戻る枠があります。導入をためらう理由がコストなら、その前提はもう古い。

最後に一つ。ツール選定より運用設計のほうが100倍大事です。紙を回収する決断ができないなら、どのツールを入れても同じ結果になります。


よくある質問(FAQ)

Q. 介護のAIツールは無料で始められますか?

汎用のチャットAIには無料プランがあり、文書の下書きや情報整理なら費用ゼロで試せます。ただし記録の音声入力は介護ソフトの機能なので、月5,000〜30,000円の契約が必要です。無料お試し期間を2カ月設けているサービスもあるので、まずそこで実力を測るのが賢いやり方。

Q. 利用者の名前をAIに入力しても大丈夫ですか?

避けてください。介護の利用者情報は病歴を含むため「要配慮個人情報」にあたり、通常の個人情報より扱いが厳しく規定されています。「80代女性、要介護2、独居」のように匿名化してから入力し、固有名詞は自分で埋める運用にしてください。

Q. AIが作ったケアプランをそのまま使えますか?

使えません。AIは利用者の生活歴も家族の意向も知らないため、出てくるのは一般的なたたき台です。サービス担当者会議に出す以上、内容の責任は事業所側にあります。下書きの叩き台として使い、判断は必ず人が入れてください。

Q. 加算要件をAIに聞いてもいいですか?

おすすめしません。条文や数字が絡む質問では、AIが古い情報をもっともらしく答えることがあります。報酬改定の内容が反映されていない可能性も高い。厚生労働省の通知や自治体の資料を直接確認してください。どうしてもAIを使うなら、資料そのものを読ませて「この中から答えて」と指示する形にすると安全度が上がります。

Q. 補助金は使えますか?

デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)は、中小企業の生産性向上を目的にAIを含むソフトウェアの導入経費を支援する制度で、介護事業所も対象になりえます。通常枠ではクラウド利用料の一部が補助される枠があります。ただし要件は年度ごとに変わるため、申請前に最新の公募要領を確認してください。

Q. スタッフがITに弱いのですが導入できますか?

できます。ポイントは項目を絞ることです。最初から全項目を埋めさせようとすると、必ず挫折します。必須項目だけで3カ月運用して、慣れてから増やす。各シフトに1人ずつ「詳しい人」を作るのも効きます。1人に依存すると、その人が休んだ日に運用が止まります。

Q. シフト作成はAIで自動化できますか?

完全な自動化は期待しないほうがいいです。「誰と誰を組ませるか」のような制約は管理者の頭の中にあり、AIには渡せません。希望休の集計、常勤換算の計算、法定要件のチェックは任せられます。「作る」のではなく「検算する」用途で入れると、ちゃんと役に立ちます。

Q. 訪問介護でも使えますか?

使えます。むしろ訪問系のほうが効果が出やすい。移動時間に音声で記録を入れられれば、事業所に戻ってからの入力作業が消えます。ただし電波の弱い場所で入力できるかは事前に確認してください。集合住宅の中で圏外になる場面は普通にあります。


関連する比較・代替を見る


介護のAI導入で本当に難しいのは、ツール選びではなく「紙をやめる」という決断のほうです。そこさえ越えれば、あとは道具が仕事をしてくれます。

次に読むならこれ: 組織としてAIの使い方にルールを敷く段階に来たら、内部監査AIツールの記事が効きます。チェック体制の作り方が、実地指導への備え方とそのまま重なります。

各ツールの公式サイト(一次情報)

料金・機能・対応範囲は各社公式が一次情報です。本記事は公開時点の検証に基づきますが、最新かつ正確な条件は必ず各公式ページで確認してください。