Google Cloudの管理画面で料金表を開いた瞬間、あまりの項目の多さに画面を閉じた経験はないでしょうか。何にいくら請求されるのかが見えない状態では、開発予算の計画も立てられません。

Vertex AIとは、Google Cloud上で機械学習モデルの構築から本番提供までを一括で管理できるクラウド基盤です。

月額固定の定額プランは存在しません。使った分だけ支払う完全従量制です。本記事では主要モデルの最新単価、追加インフラ費用、月額の現実的な試算例を整理します。

Vertex AIの料金はどういう仕組み?

Vertex AIの料金はどのような仕組み?

Vertex AIの課金体系は、大きく3つの階層に分かれます。APIを呼び出した回数だけでなく、データを保管する容量やサーバーを占有する稼働時間にも料金が発生します。

以下は、システム運用時に発生する費用の内訳です。

課金カテゴリ主な対象課金単位
生成AI API(トークン課金)Gemini 3.1 Pro Preview / 3.8 Flashなど100万トークン単位(入力・出力)
ストレージ料金学習データ、評価データ、モデルファイルGB / 月
サービング・コンピュートカスタムモデル配置、GPUインスタンスマシンタイプごとの時間単価
エージェント・検索Agent Engine、Vertex AI Search実行セッション数、クエリ数

AI PICKS調べ: AIツール全体の有料プラン中央値は月2,850円(n=1,221、2026-10-18時点)。料金統計レポートで見る

つまり、テキストを生成した量に加えて、データを保存した箱の大きさと、計算機を動かした時間で合計金額が決まります。

APIの利用料だけを想定していると、月末にサーバー維持費が上乗せされて慌てることになります。全体像を把握した上で、個別の単価を確認します。

Geminiモデルのトークン単価一覧

Geminiモデルのトークン単価一覧

Vertex AIの中核となるGeminiモデル群は、処理したトークン数に応じて費用が発生します。トークンとは、AIが文字を処理する際の最小単位です。

次の表は、現在Vertex AIで提供されている主要Geminiモデルの利用単価をまとめたものです。

モデル名入力単価(100万トークンあたり)出力単価(100万トークンあたり)主な用途
Gemini 3.5 Flash-Lite$0.30$2.50超低コストな分類処理、定型データ変換
Gemini 3.8 Flash(導入価格)$0.75$3.75低遅延チャット、大量テキストの分類
Gemini 3.5 Flash$1.50$9.00高度な論理思考と応答速度の両立
Gemini 3.1 Pro Preview(200K以内)$2.00$12.00複雑な業務自動化、難関課題の解決
Gemini 3.1 Pro Preview(200K超)$4.00$18.00超長文ドキュメントの一括分析

Gemini 3.8 Flashの単価は2026年12月31日までの導入価格です。2027年1月1日から入力$1.50・出力$7.50へ切り替わるので、年間予算を組むときはこの段差を織り込んでおいてください。

つまり、最安のFlash-Liteと3.1 Pro Previewでは、入力単価でおよそ7倍、出力単価でおよそ5倍のコスト差が生じます。

すべてのタスクに最上位モデルを割り当てると、予算は一瞬で底をつきます。日常の定型処理はFlash系に任せ、複雑な推論が必要な場面にのみPro系を呼び出す設計が基本です。社内のテキスト処理を自動化する計画なら、AI自動化の導入事例も参考になります。

なお、日本語1文字は約1〜1.5トークンに換算されます。日本語で100万文字をGemini 3.5 Flash-Liteに入力した場合、コストは約$0.30〜$0.45(日本円で約45円〜70円)程度です。検証段階でのAPI単体費用は安価に収まります。

コンテキストキャッシュとバッチ処理で費用を削る方法

大量の固定データを繰り返し読み込ませる場合、毎回通常料金を払う必要はありません。Vertex AIには、プロンプトキャッシュとBatch APIという2つの割引手段が用意されています。

以下は、割引機能を適用した際の単価比較です。

処理方式入力単価(Gemini 3.5 Flash-Lite)割引率・条件
通常呼び出し(同期API)$0.30 / 100万トークン基準価格(即時応答)
コンテキストキャッシュ$0.03 / 100万トークン最大90%引き(キャッシュ保管料が別途発生)
Batch API$0.15 / 100万トークン50%引き(24時間以内の非同期返却)

つまり、社内マニュアルなどの固定文書を何度も参照させる構成では、キャッシュの利用により入力コストを10分の1まで圧縮できます。

深夜にまとめて実行できるデータ分析や文書要約であれば、Batch APIの利用が一択です。半額の単価で全件処理を実行できます。社内文書を横断検索する仕組みの全体像は、AIリサーチの解説記事で詳しく扱っています。

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画像・音声・動画生成の料金体系

テキスト以外のマルチモーダル生成機能には、それぞれ独立した課金単位が設定されています。トークン数ではなく、1画像や秒数ごとに加算される仕組みです。

次の表は、メディア生成機能の主要な単価目安です。

機能・モデル課金単位単価目安
Nano Banana系(Gemini画像モデル)1画像あたりモデルと解像度に応じた従量課金(Imagenは2026年8月17日に全世代が停止済み)
音声入力(Geminiマルチモーダル)100万トークンあたり$1.00(テキスト入力より高い)
動画入力(Geminiマルチモーダル)100万トークンあたり$0.30(テキストと同等)
Veo(動画生成)秒数あたり生成解像度・フレームレートに応じた従量課金

つまり、画像や動画を生成するタスクは、テキスト処理に比べて1リクエストあたりのコストが跳ね上がります。

グラフィック生成を業務に組み込むなら、1枚ごとの出力単価を事前に予算へ組み込んでおく必要があります。バナー作成などの用途を検討している方は、AI画像生成やAIデザインのツール比較を先に確認すると費用の見通しが立ちます。

動画生成の最新トレンドについては、AI動画生成の動向もあわせて押さえておく必要があります。

画像・自然言語など、生成AIの課金単位

インフラとMLOps機能にかかる固定費用の目安

自社専用の機械学習モデルをファインチューニングしたり、常時接続のエンドポイントを用意したりする場合は、Google Cloudの仮想マシン費用が発生します。

以下は、モデルの運用や学習に利用される代表的なGPUインスタンスの時間単価です。インスタのことをもう少し知りたい人はインスタ予約投稿のやり方5ステップへ。

マシンタイプ・構成搭載GPU時間あたり料金(目安)月額換算(24時間30日稼働)
g2-standard-4NVIDIA L4 (1基)約$0.81約$583
g2-standard-8NVIDIA L4 (1基)約$0.98約$705
g2-standard-16NVIDIA L4 (1基)約$1.32約$950
g2-standard-48NVIDIA L4 (4基)約$4.60約$3,312
Vertex AI Pipelinesパイプライン実行ごと約$0.03 / 1実行実行回数に応じた従量課金

つまり、モデルをエンドポイントにデプロイしたまま放置すると、APIを1回も叩かなくても月額10万円前後の固定費が発生します。

自前でオープンソースモデルをホストする運用は、中小規模の案件では割に合いません。GeminiのようなフルマネージドAPIを利用する方が、インフラ管理の手間もインフラ固定費も削減できます。

Agent Engineと検索機能にかかる運用コスト

2026年のアップデートにより、Vertex AI上で自律型エージェントを構築する機能「Agent Engine」の正式課金が開始されました。単純なAPI呼び出しにとどまらず、状態の保持やコード実行環境に対しても料金が適用されます。

次の表は、Agent Engineおよび連携サービスの課金項目です。

機能モジュール課金対象課金内容の目安
Agent Engine Runtimeランタイム起動時間実行中のコンピュートリソース課金
Sessions / Memory Bank会話履歴・記憶の保持セッション数および保持データ容量
Code Executionサンドボックス内コード実行実行回数・時間に応じた課金
Vertex AI Search検索エンジン連携インデックス容量 + クエリ数課金

つまり、複雑な自律エージェントを組むと、トークン代のほかにセッション維持費と検索インデックス費が加算されます。

長期記憶を持たせたエージェントの運用を検討しているなら、AIエージェントのアーキテクチャ設計を学んでおくことで、無駄なセッション保持コストを回避できます。社内ヘルプデスク用途で導入する場合は、AIカスタマーサポートの構成パターンをなぞるのが安全です。

Vertex AIは無料で使える?

Google Cloudには、Vertex AIを無料で試すための枠組みが用意されています。ただし、無期限で使えるAPI呼び出し枠と、期間限定クレジットの違いを把握しておく必要があります。

以下は、利用可能な無料特典の概要です。

特典の種類提供内容適用条件・期限
Google Cloud新規登録特典$300分の無料クレジット初回登録から90日間有効
毎月の無料枠(Free Tier)Cloud Storage 5GBなど周辺機能常時適用(Vertex AIのAPI自体は対象外)
Google AI Studio(比較対象)無料のAPI呼び出し枠1分あたりのリクエスト制限あり・データ利用規約あり

つまり、Vertex AI上でGeminiを動かす場合、完全無料の常設枠はなく、新規登録時の300ドルクレジットを消費する形になります。

本格的な開発に入る前のプロトタイプ作成なら、Google AI Studioの無料枠を使う手段が賢明です。ただし、入力データがAIの学習に利用される可能性がある点には注意を払う必要があります。

機密情報を扱う業務システムであれば、最初からVertex AIを選びます。Vertex AIは顧客データをモデルの学習に利用しない規約になっているためです。セキュリティ要件が厳しい開発案件では、AIセキュリティのガイドライン遵守が前提となります。

Google AI StudioとVertex AI、料金以外の違いは?

同じGeminiを呼ぶ場合でも、窓口によって付いてくる保証が違います。判断の軸は「止まったときに許せる損失の大きさ」です。

比較項目Google AI StudioVertex AI
主な目的個人の動作確認・試作チーム開発・商用システムの運用
SLA(稼働保証)なしあり
権限管理Googleアカウント単位IAMで部署・役職ごとに制御
閉域接続不可VPC Service Controlsで遮断できる
請求個人向け従量課金Google Cloudの請求書に合算

よくある失敗は、AI Studioで業務フローを作り込んでから移行することです。指示文(プロンプト)は流用できても、認証や監視の設計はやり直しになります。社内配布の予定があるなら、検証の段階からVertex AIのプロジェクトを用意しておくのが無難です。

月額コストのシミュレーション3パターン

実際に企業がVertex AIを導入した際、毎月の請求額がどの程度になるのかを規模別に試算します。

次の表は、3つの想定シナリオにおける月額費用の内訳です。

運用規模想定構成月間処理量月額費用の目安
小規模(社内ツール)Flash-Lite / 3.8 Flashのみ月間1,000万トークン約$10〜$25(約1,500円〜4,000円)
中規模(顧客対応ボット)Flash + Pro併用+ Search月間1億トークン + 社内文書検索約$150〜$400(約2.3万円〜6万円)
大規模(基幹システム)Pro中心+ Agent Engine + GPU常駐月間10億トークン + L4サーバー1台約$2,500〜$4,500(約38万円〜70万円)

つまり、マネージドAPIだけで構成する限り、月額数万円以内で高度なAIシステムを運用できます。

費用が一気に跳ね上がる境界線は、「専用GPUインスタンスの常時立ち上げ」と「大規模なProモデルの常用」です。最初はFlashモデル中心のスモールスタートで進め、精度に問題が出た箇所だけProモデルへ切り替える設計が最も失敗しません。社内業務全般の効率化を目指すなら、AI生産性・ノートの活用も並行して進めると効果的です。

請求アラートと予算上限を設定する手順

従量課金制のクラウドサービスで最も避けたい事態が、プログラムの無限ループや不正アクセスによる請求額の暴走です。開発環境を構築したら、何よりも先に予算上限とアラートを設定します。

設定は以下の手順で行います。

  1. Google Cloudコンソールの左側メニューから「お支払い(Billing)」を開きます。
  2. 「予算とアラート」を選択し、「予算を作成」をクリックします。
  3. 対象プロジェクトにVertex AIを利用する環境を指定します。
  4. 月ごとの目標予算額(例:50ドル)を入力します。
  5. アラートの閾値を設定します(予算の50%、90%、100%到達時にメール送信)。

予算上限に達した際にAPI呼び出しを自動停止させるCloud Functionsスクリプトを連携しておけば、想定外の請求を未然に防ぐことができます。プログラミング作業を効率化したいエンジニアは、AIコーディングツールを併用すると設定ファイルの作成も迅速に進みます。

AI PICKS編集部の判定

Vertex AIの料金設計は、数あるエンタープライズ向けAI基盤の中でも極めて良心的です。特にGemini 3.5 Flash-Liteの入力100万トークン$0.30という単価設定は、競合サービスと比較しても十分に安い水準です。社内文書の分類や一般的なチャットボット用途であれば、月数千円の予算で本番運用に耐えうる環境が手に入ります。

一方で、上位モデルのGemini 3.1 Proを無計画に組み込んだり、不要になったGPUインスタンスを停止し忘れたりした途端、請求額が一気に跳ね上がる点は注意が必要です。常時稼働の専用エンドポイントを立てる構成はコストパフォーマンスの観点から正直イマイチであり、まずはサーバーレスなマネージドAPIだけで完結させる設計が一択です。

よくある質問(FAQ)

Q. Google AI StudioとVertex AIの違いは何ですか?

Google AI Studioは開発者向けのプロトタイプ作成環境であり、Vertex AIは企業の商用システム向けクラウド基盤です。AI Studioの無料プランは手軽にAPIキーを取得できますが、入力データがモデル学習に利用される規約となっています。Vertex AIはGoogle Cloudのエンタープライズ規約が適用され、入力データが学習に使用されることはありません。また、SLA(サービス品質保証)やVPC連携などのセキュリティ機能もVertex AIのみ提供されます。

Q. 為替レートによる日本円の支払い額の変動はありますか?

あります。Google Cloudの請求は基本的に米ドル(USD)ベースで計算され、請求発生時の為替レートに基づいて日本円に換算されます。円安が進行している時期は、ドル建ての利用料が変わらなくても日本円の支払額が増加するため、予算計画には10〜15%程度の為替バッファを組み込んでおく運用を推奨します。

Q. トークン数の消費量はどこで確認できますか?

Google Cloudコンソールの「Vertex AI」ダッシュボード、または「Cloud Monitoring」の画面からリアルタイムに確認できます。モデル別、APIメソッド別のリクエスト回数と入出力トークン数がグラフ化されるため、予期せぬ消費急増が発生していないかを日次で監視可能です。

Q. Batch APIと通常呼び出し(同期API)はどのように使い分けますか?

即時応答が不要で24時間以内の非同期返却で問題ないデータ処理にはBatch APIを利用します。入力単価が基準価格の50%引き(Gemini 3.5 Flash-Liteなら100万トークンあたり$0.15)に抑えられます。リアルタイムチャットや即座に結果を返すユーザー向け対話処理には通常呼び出し(同期API)を選択します。

Q. Google Cloudの300ドル無料クレジットが切れた後は自動的に課金されますか?

初回登録の無料クレジットは90日間有効です。無料クレジットを使い切るか有効期限が切れた場合、有料アカウントへの手動アップグレードを行わない限り自動請求は発生しません。本番運用のために有料アカウントへ移行した後は、無料枠の範囲を超えた利用分に対して登録クレジットカードへ従量課金されます。

Q. Geminiを利用するだけでGPUインスタンスの固定維持費は発生しますか?

発生しません。Gemini 3.8 FlashやGemini 3.1 Pro PreviewなどのマネージドモデルをAPI経由で呼び出す構成では、処理した入出力トークン数に応じた従量課金のみが発生します。GPUの稼働時間に応じた固定サーバー費用が発生するのは、自前で用意したカスタムモデルを専用エンドポイント(g2-standardなど)へデプロイして常時起動させた場合に限られます。


次に読むならこれ: APIの利用だけでなく、社内業務を自動化するAIエージェントの具体的な構築手順に関心がある方は、AI自動化ツールの実践ガイドをあわせて読むと実装イメージが掴めます。

参考にした一次情報

記事の事実関係は、次の公式ページで確認しています。仕様や料金は変わることがあるため、最新の内容は各ページで確かめてください。