「Clearbitの公式サイトを開いたら料金ページが無くなっていた」。そこから調べ始めた人が、今いちばん多いはずです。答えは単純で、Clearbitはもう単体では買えません。HubSpotに吸収され、いまはHubSpotの機能の一部になっています。

つまり、比較対象は「Clearbit vs他社」ではなく「HubSpotごと乗るか、乗らないか」に変わりました。ここを取り違えると、見積もりが2桁ずれます。


Clearbitとは、そもそも何をするツールだったのか

Clearbitとは、そもそも何をするツールだったのか

Clearbitとは、メールアドレスや会社ドメインから企業情報・担当者情報を自動で補完する、B2B向けのデータ補完サービスです。営業リストの穴を機械が埋めてくれる道具、と考えると近いです。

たとえばフォームに taro@example.co.jp とだけ入力があったとき。そこから業種・従業員規模・所在地・技術スタックなどを引っ張ってきて、CRM(顧客管理システム)のレコードに自動で書き込みます。

営業側のうまみは、フォームの入力欄を減らせることでした。7項目聞いていたものを2項目に減らし、残りは裏で補完します。入力の手間が減れば、フォーム完了率は上がります。

この「エンリッチメント(データ補完)」という領域で、Clearbitは長く定番でした。過去形なのには理由があります。


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HubSpotによる買収で何が変わった?

HubSpotによる買収で何が変わった?

一言でいえば、独立したツールから、HubSpotの機能のひとつになりました。しかも改称は1回では終わっていません。2023年12月に買収が完了し、2024年9月のINBOUNDでBreeze Intelligenceとして再登場。さらに2025年6月2日〜15日にかけて、Breeze Intelligence CreditsがHubSpot Creditsへ統合されました。

2026年9月時点では、HubSpotの公式製品カタログから「Breeze Intelligence」という製品名自体が消えています。製品ページも404。いまは各Hubに載った「データエンリッチメント」機能と「購買シグナル(buyer intent)」機能、という扱いです。つまりClearbitを探している人が追うべき名前は、もうBreeze Intelligenceでもありません。

変化を整理すると、こうなります。

買収前後で何がどう変わったかを並べます。

項目買収前のClearbit現在(HubSpotの機能)
契約形態単体で契約可能HubSpot契約が前提
料金ページ公開単体では非公開
課金の考え方月額プラン中心シート課金 + HubSpot Credits(従量)
CRMの選択肢Salesforce等と自由に接続HubSpotに強く寄る
無料枠あり無料ツール群は2025年4月30日に終了

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つまり、道具としての性能ではなく「どこに置かれているか」が変わったわけです。データの中身そのものは、買収前から大きく劣化したわけではありません。問題は入口です。

Salesforceを使っている会社が、エンリッチメントのためだけにHubSpotを契約します。この構図が現実的かどうかが、判断の分かれ目になります。


いまの料金はいくら?

いまの料金はいくら?

「エンリッチメント単体でいくら」という値段は、もう存在しません。かかるのはHubSpotのシート代で、いちばん軽いStarterが1シート月$20です。

クレジットの単価と含有数は、HubSpotの公式カタログに公開されています。ここは意外と明朗です。

項目現行の価格
追加クレジット$0.010 / 1クレジット
容量パック1,000クレジット 月$10
従量課金$0.010 / クレジット(10クレジット単位)
プラン同梱Starter 500 / Professional 3,000 / Enterprise 5,000

Data HubとCustomer Platformは同梱数が多く、500 / 5,000 / 10,000という並びになります。

ここで一番大事な点を書きます。データエンリッチメントはHubSpot Creditsを消費しません。 公式ヘルプが明記しています。クレジットを消費するのは購買シグナルの企業トラッキング(1社あたり月10クレジット)、カスタムシグナルの監視(50クレジット)、AIエージェント類のほうです。

つまり「補完件数 × 単価で請求が膨らむ」という旧Clearbit時代の心配は、現行の仕組みには当てはまりません。かわりに効いてくるのはシート数です。

想定規模必要なもの月額の目安
個人・検証Starter 1シート(500クレジット同梱)$20前後
小規模チームStarter 数シート$60〜100規模
中堅チームProfessional(3,000クレジット同梱)プラン階層で変動
大企業Data Hub Enterprise月$2,000〜(年契約)

注意したいのは、エンリッチメントが使えるHubの種類です。公式ヘルプが挙げているのはSales Hub・Data Hub・Content Hub・Smart CRMのStarter以上と、Revenue HubのProfessional以上。Marketing Hubは列挙されていません。「HubSpotの有料プランならどれでもいい」わけではないので、契約前にHub名まで確認してください。


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クレジット制のどこが落とし穴になるのか

クレジット制のどこが落とし穴になるのか

クレジット制は、使った分だけ払う仕組みです。公平に聞こえます。実際は読みにくいです。

ただし読み違えないでほしいのは、消費するのが何かという点です。エンリッチメント(レコードの補完)はクレジットを使いません。使うのは購買シグナルまわりとAIエージェントです。

  • 購買シグナルで1社を追跡すると月10クレジット
  • カスタムシグナルの監視は1件50クレジット
  • 対象企業を増やすほど、そのまま請求が伸びる

追跡対象を500社に広げれば月5,000クレジット。同梱枠がStarterの500件では到底足りず、容量パックの追加が要ります。予算を月次で固めたい会社は、ここで読みが外れます。

対策は地味ですが効きます。購買シグナルの追跡を全件に広げず、条件で絞ること。ターゲット業種と規模で母集団を切ってから追跡に載せる、という前段の設計です。ここを飛ばすと、コストの大半が見込みの薄い企業の監視に消えます。

クレジット消費型SaaSのコスト管理という点では、Apifyの料金と無料枠の使い方で扱っている「対象を絞って回す」考え方と地続きです。全件やるのがいちばん高くつく、という点で共通しています。


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実際に何ができるのか、機能を整理する

機能は大きく3つに分かれます。フォーム短縮、レコード補完、企業識別です。

主要機能とその効き所をまとめます。

機能何をするか効きやすい場面
データエンリッチメントメール・ドメインから企業情報を補完営業リストの品質改善
フォーム短縮入力欄を減らし裏で補完資料請求・デモ申込
訪問企業の識別IPアドレスから企業を推定ABM(特定企業への集中営業)
購買シグナル検討中の企業を外部の動きから検知商談化しやすい先の優先づけ
スコアリング連携補完データで優先度づけインサイドセールスの振り分け

つまり、リードの「数」を増やす道具ではなく、既にあるリードの「解像度」を上げる道具です。ここを勘違いすると期待外れになります。

購買シグナル(buyer intent)も、いまは標準で用意されています。かつてのClearbit単体には無かった部分です。自社サイトを訪れた企業の識別にとどまらず、Web上で特定トピックを調べている企業、資金調達・役員採用・人員削減・製品発表・M&Aといった企業ニュースまで拾う設計になっています。


日本企業のデータでも使えるのか?

正直、期待値は下げたほうがいいです。強いのは英語圏、特に米国のテック企業。日本の中小企業になると、業種も従業員数も空欄で返ってくることが増えます。

理由は元データの作り方にあります。公開Webページ、求人情報、SNSプロフィール、技術スタックの痕跡。こうした英語圏で拾いやすい情報を組み合わせて推定しています。日本語の企業サイトは構造も表記も揺れが大きく、機械的な抽出がそもそも難しいです。

上場企業や外資系日本法人なら、そこそこ埋まります。従業員30人の地方の製造業は、ほぼ埋まりません。

日本国内向けの営業リストが主戦場なら、国産の企業データベースを併用するほうが現実的です。海外SaaS一本で押し切ろうとすると、補完率3割で「クレジットだけ減った」という結果になりがち。

海外発のツールがどこまで日本語環境に馴染むかという話は、どの製品でも同じ壁が出てきます。UIの日本語化とデータの日本対応は、まったく別問題です。

ここまでの整理 ・Clearbitは単体では買えず、HubSpot契約が前提 ・実質の最低ラインはStarter 1シートの月$20前後 ・エンリッチメントはクレジット非消費。伸びるのはシート数と購買シグナルの追跡社数 ・日本の中小企業データは補完率が落ちる ここから先は「では誰が使うべきか」を詰めます。


向いている会社と、やめておいたほうがいい会社

判断は驚くほどシンプルです。HubSpotを既に本気で使っているかどうか。

向いているのは、次のような会社です。

  • HubSpotをCRMの中心に据えて2年以上運用している
  • 海外、特に北米の企業をターゲットにしている
  • 月間のフォーム流入が数百件以上あり、手作業の補完が限界

逆に、次のどれかに当てはまるならやめておくべきです。

  • Salesforceや他のCRMが社内標準になっている
  • 営業対象が国内の中小企業中心
  • 月の予算が数万円で固定されている

特に2番目は致命的です。データが埋まらないツールに、埋まらなかった分のクレジットまで払います。これは投資ではなく漏水です。


代替ツールはどう選べばいい?

軸は3つだけで足ります。CRMの相性、データの地域、課金の読みやすさ。

代替候補を役割で分けると見通しが良くなります。

タイプ得意なこと検討したい会社
訪問企業の識別型自社サイトに来た企業を特定既に流入があるBtoB
連絡先取得型担当者のメール・役職を取得アウトバウンド主体
国内データベース型日本企業の基本情報が厚い国内営業が中心
CRM内蔵型契約済みツールの標準機能追加コストを抑えたい

つまり、「Clearbitの代わり」を1本で探すのではなく、自社の穴がどこかを先に決めるのが近道です。訪問企業を知りたいのか、担当者名が欲しいのか。ここが混ざったまま比較表を作ると、どれも中途半端に見えてきます。

候補を洗い出す段階では、AIツールおすすめ一覧65選のような目的別の一覧から当たりをつけると、下調べが速く終わります。個別ツールの深掘りは、そのあとで十分です。


導入前に必ず確認する5つのこと

契約前の30分で、後の1年が決まります。

  • 補完率のテスト:自社の既存リード100件を渡して、何%埋まるか実測する
  • クレジットの消費単位:エンリッチメントは非消費。購買シグナルで何社を追うと何クレジットになるか
  • 解約時のデータ:補完済みデータを持ち出せるか、削除義務があるか
  • CRMの前提:必要なHubSpotプラン階層を先に確定させる
  • 上限設定:月あたりの消費上限をシステム側で止められるか

このうち1番目を飛ばす会社が多すぎます。ベンダーのデモは、当然ながらデータが揃っている企業で行われます。自社のリードで試さないかぎり、本当の補完率は分かりません。

無料のトライアルが用意されていない場合は、最小パックで1か月だけ回して判断します。それでも数万円の授業料で済みます。


個人データを扱ううえで気をつけたいこと

企業情報の補完と、個人情報の取得は、法的な扱いが違います。日本の個人情報保護法では、氏名やメールアドレスと結びついた属性情報は個人データにあたります。

第三者から個人データを取得する場合、取得元と取得経緯の確認・記録が求められます。海外ベンダーを使う場合は、越境移転の同意や体制整備の論点も乗ってきます。

実務としては、プライバシーポリシーに「第三者から情報を取得し補完する場合がある」旨を明記しておくのが最低ライン。ここを空欄にしたまま運用している会社、かなり多いです。

法務の判断を仰ぐべき領域なので、この記事の内容だけで決めないでください。ツールの機能より、社内の合意形成のほうが時間がかかります。


AI PICKS編集部の判定

HubSpotを本気で使っている会社なら検討する価値あり。それ以外には一択で「見送り」です。

データの品質そのものは、買収後も競争力を保っています。フォームを2項目に減らして完了率を上げる効果も、実際に数字で出るタイプの施策です。道具として悪いわけではありません。

問題は値付けと囲い込みです。かつて単体で契約できた時代と比べ、入口のハードルが跳ね上がりました。エンリッチメントのためにCRMごと乗り換えます。この判断が成立する会社は、そう多くないはずです。

さらに日本市場では、国内中小企業の補完率という構造的な弱点があります。ターゲットが国内中心なら、支払ったクレジットの半分が空振りに終わる可能性を織り込む必要があります。正直、コスパは微妙です。

結論。既にHubSpotが社内標準で、かつ海外案件を追っているなら、最小パックから試す価値はあります。そうでないなら、国内データベースと訪問企業の識別ツールを別々に組み合わせたほうが、安く確実に目的を果たせます。


よくある質問(FAQ)

Q. Clearbitはもう使えないのですか?

サービス自体は動いていますが、単体での新規契約はできません。HubSpotの契約に付随するデータエンリッチメント機能として利用する形になります。Clearbitの無料ツール群は2025年4月30日に、Logo APIは2025年12月1日に提供を終えました。

Q. Clearbitの無料プランはまだありますか?

単体の無料プランは廃止されました。HubSpotの無料CRMは引き続き使えますが、エンリッチメント機能は有料プランとクレジットの購入が前提です。

Q. 最低いくらから始められますか?

2026年9月時点で、HubSpot Starterの1シート月$20前後が下限です。クレジットは500件が同梱され、データエンリッチメント自体はクレジットを消費しません。追加が要るのは購買シグナルを広く使う場合で、クレジットは$0.010/件、1,000件の容量パックが月$10です。

Q. APIだけ使うことはできますか?

旧Clearbit単体のAPIは新規提供が終了しています。現在はHubSpotの機能として組み込まれているため、API利用もHubSpot契約の枠内での話になります。開発者向けに独立して使う用途には向きません。

Q. 日本の会社の情報はどれくらい埋まりますか?

上場企業や外資系日本法人は比較的埋まりますが、従業員数十人規模の国内企業は空欄が目立ちます。契約前に自社の既存リードで補完率を実測してください。ここを省略すると判断を誤ります。

Q. 乗り換えるとしたら何が大変ですか?

CRMごと移す話になるので、負荷は小さくありません。カスタムプロパティの対応表づくり、既存の自動化ワークフローの再構築、履歴データの移行。この3つで大半の工数が消えます。3か月は見ておいたほうが安全です。

Q. 購買シグナルの検知はできますか?

できます。HubSpot側の購買シグナル機能として標準で用意されており、自社サイトの訪問だけでなく、Web上でのトピック調査や資金調達・役員採用といった企業ニュースも検知対象です。ただし1社の追跡につき月10クレジットを消費するため、対象を広げるほど費用が伸びます。


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